試み

ひとりとひとりが寄り添って、互いの人生を分かち合いながら歩いてみようか、と試みること。

「結婚」なるものをしました。

この春のことです。

 

漠然と、人生のパートナーがほしいとは思っていたものの、結婚をすることになるとは1年前のわたしは思ってもみませんでした。

まだ仕事も半人前で、自分なりの暮らしの型もできていないのに、誰かの人生を半分背負うなど、誰かに人生の半分を背負わせるなど、できない。

そんな風に思っていました。

 

あのタイミングしかないというタイミングで二人でご飯に行き、「出逢った」。

あのタイミングだからこそ話したことがあり、そのことばが相手の心を揺さぶった。

あのタイミングだからこそああ振る舞えて、彼を相手にそう振る舞えた事実がわたしの心を揺らした。

いま思えば、ほんとうに、いくつもの偶然が重なった先にこの結婚があります。

 

たくさん話しました。何に傷ついたか、人間関係でどんな失敗をしたか、何のどんなところが好きなのか。

たくさん話せました。自分を偽らず、何は話せないかと言うことも、自分の醜さも吐露しました。

お互いの生活ぶりも見ました。私は、いつもより少しだけ整った自分の部屋を「いつもより少しだけ整えてある」と伝えて見せたし、彼は、「いつもこんな風」と普段の片付いた部屋を見せてくれました。

 

ああ、この人となら、大丈夫かもと思いました。

彼との出会いやこの確認のディティールを友人について話すと、「双方のめんどくささがお似合いだね」と言われました。

ひとはきっとみんな、誰かにとってめんどくさい面を持っているけれど、わたしと彼はお互いのめんどくささをさほどめんどくさいと思わない相性のようです。

 

ひとは変わる。だから、この相性が永遠のものかはわかりません。

 

でも、いま目の前に、ふたりの時間がある。

どれだけ友人に話しても、わたしたちがふたりで分かち合った時間、ことば、空気は、いささかも色褪せることなく、わたしたちの間にあります。そして、積み重なっていく。

そうやって、人知れず、ふたりで思い出を積み重ねていく幸せと同時に、そうしてふたりで積み重ねた思い出は、いつか誰にも知られずに、ひっそりと失われていくのだという寂しさが襲ってきました。

 

書いても、尽きない。

書いても、書き尽くせない。

 

 

それでも、いま、確かに幸せと感じる、あいまいで形にならないものが、わたしの生活の中にはある。

その手触りだけでも止めておきたくて、書きました。

 

彼と付き合ってから知ったことはたくさんあるけれど、「こんな気持ちは知らなかった」と何度思っただろう。

 

次は、どんな気持ちを知るだろう。

 

まだ、わたしたちの試みは、始まったばかりです。

「続く」。いや、続けていく。続けたい。続けよう。

願わくば、変わっていく自分たちを楽しみながら。